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マンション修繕と改修の違いとは。建物の維持と資産価値向上の選択肢

一棟マンションやアパートを所有している不動産投資家や、分譲マンションにお住まいの方であれば、『大規模修繕工事』という言葉を聞いたことがあると思います。
多くの方が、大規模修繕工事を経年劣化による損傷の修理と考えていることでしょう。しかし、正確な定義や内容、そしてそのメリットや実施しないことに伴うリスクについてご存知でしょうか。
また、「修繕」と似たような言葉で「改修」が存在しますが、その違いを正確に理解されていますでしょうか。
この記事では、修繕と改修の違いや大規模修繕工事について解説します。
不動産オーナーや分譲マンションの管理組合員など、資産価値向上に関心のある方々にとって、重要な情報となるでしょう。ぜひ最後までお読みいただき、建物の維持管理や価値向上に役立ててください。

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『修繕』と『改修』の定義

「修繕」と「改修」について、それぞれの定義を説明します。

修繕とは

「修繕」とは、建物やその一部、設備、部材などが経年や雨風、自然災害などの外的要因によって劣化や不具合を起こした際に、修理や取り替えなどの処置を行い、適切な状態に回復させる工事を指します。
これは単なる応急処置ではなく、建物が建設された当初の水準の性能や状態を取り戻すことを目指します。
修繕は、専門的な知識と適切な手法を用いて行われる重要な作業であり、建物の寿命を延ばし、住民や所有者に安心と快適さを提供します。

改修とは

「改修」とは、建物や設備などの劣化や不具合を修理するだけでなく、性能や機能を向上させるために行う工事のことを指します。
長い年月を経たマンションは、新築物件と比べると建物や設備の性能や機能が劣ってしまう傾向があります。この性能や機能の差が広がると、住民は快適な生活を送ることが難しくなり、また資産価値の低下にもつながります。
なお、単に性能や機能を付与する工事は「改良」といい、「改修」は、修繕と改良を組み合わせて行う工事を指します。

旧借地法、借家法、建物保護法と新法の借地借家法

借地借家法は平成4年8月1日に施行されましたが、それ以前は「建物保護法」、「借地法」、「借家法」の3つの特別法がありました。
建物保護法は、借地人が借地上の建物について保存登記をすれば、その土地の借地権(賃借権、地上権)については登記がなくても第三者に対抗できる旨が規定されていました。借地法、借家法はそれぞれ借地、借家権の存続期間、対抗要件について規定されています。
これらの3つの法律をまとめたのが借地借家法です。(建物保護法の内容は廃止されました。)
借地借家法施行以前に締結された賃貸借契約には旧法が適用されます。現在存続する借地でも旧法が適用されているものは多いです。

リフォームとリノベーションの違い

「修繕」と「改修」の違いと同様に、「リフォーム」と「リノベーション」の違いも存在します。
「リフォーム」とは、主に老朽化や劣化した部分を修復し、建物を新築時の状態に近づけるための工事を指します。
具体的には、壁や床の張り替え、設備の交換、外壁の塗装などが含まれます。目的は、建物の状態を回復させることにあり、すなわち、「修繕」に相当します。

一方、「リノベーション」は、建物の性能や価値を改善し、新たな付加価値を創造することを目的とした工事です。
食洗機や浴室換気乾燥機などの最新設備の導入や間取りの変更、デザインの一新、耐震補強などが含まれます。
建物の機能やデザインを現代的にアップデートし、より魅力的な空間を生み出すことを目的としており、「改修」に相当します。

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修繕工事の内容とその重要性

修繕工事には、外壁の補修、屋根や床の防水工事、給排水設備の修理・交換、共用部の塗装や床の張り替え、エレベーターの更新などが含まれます。
適切な修繕工事により、建物の安全性や快適性が確保され、住民の生活環境が向上します。また、建物の資産価値の維持にも寄与します。

適切な修繕が行われないリスク

適切な修繕を怠ると、以下のような問題が生じる可能性があります。

建物の劣化と損傷

適切な修繕を怠ると、外壁や屋根の劣化が進み、建物の構造が弱体化します。
この結果、建物の耐久性や安全性が低下し、倒壊のリスクが高まったり、雨漏りが発生したりする可能性があります。
例えば、劣化した外壁からの水漏れが部屋内に浸水し、内部の壁や床が損傷することが考えられます。

快適性の低下

適切な修繕が行われないと、給排水設備や暖冷房設備などの機能が低下し、住民の快適な生活が損なわれます。
例えば、老朽化した給水管からの水漏れにより、水の供給が滞り、水圧が低下することや、排水管の劣化により詰まりが発生することが考えられます。
また、断熱材の劣化により、室内の冷暖房のコントロールが困難になり、住環境が悪化する可能性があります。

資産価値の低下

同じエリアの他の物件に比べて設備や仕様が古く、修繕が行われていないマンションは、購入希望者やテナントからの需要が低くなることが考えられます。
その結果、入居募集や購入意欲に影響し、資産価値が低下する可能性があります。

緊急な修繕費用の増大

定期的な修繕が怠られると、劣化や損傷が進行し、緊急の修繕が必要になる場合があります。
このような場合、突然の費用負担による経済的な困難が生じる可能性があります。

改修工事の内容とその重要性

改修工事は、先程も説明した通り、修繕工事に加えて性能や機能を向上させることです。
具体的な改修工事の例をいくつかご紹介します。
まず、外壁の塗装による改修です。建築当初の色味から、より現代的で鮮やかな色やデザインに変更することで、建物の外観を一新します。これにより、周囲からの印象を向上させ、建物の魅力を高めることができます。
次に、共用部のトイレを刷新する改修工事です。シャワートイレを導入することや、手洗い場を新しいものに交換し、住民の利便性や快適性を向上させます。清潔感のあるトイレ環境は、住民の満足度を高めるだけでなく、訪れる人にも好印象を与えます。

エントランスの天井スペースを広く変える改修や、エレベーターホールのデザイン変更も効果的です。これにより、建物の入口や共用スペースがより開放的で魅力的な雰囲気になります。
細かい箇所をいえば、玄関ドアを交換することで、建物の雰囲気や印象を一新することができます。
また、インターホンをモニター付きのものに変更することで、セキュリティや利便性を向上させることができます。
オートロック機能の導入や宅配ロッカーの設置などが行われることがあります。雨ざらしの駐輪場に、屋根を設ける工事も改修の一環と言えます。

改修工事のメリット

改修工事のメリットは以下の通りです。

快適な生活環境の提供

改修工事により、建物や設備がアップグレードされ、住民の生活の快適さが向上します。エアコンや給湯器の改修による快適な室内環境や、バリアフリーな設備の導入による利便性の向上が期待できます。

資産価値の維持または向上

見た目が良い外観や機能的な設備の充実は、将来的な売却や賃貸時に高い評価を受けることができ、資産価値の維持または向上に繋がるでしょう。

入居者の確保と満足度向上

改修工事により魅力的な建物となることで、入居者の確保や長期的な滞在を促進し、住民の満足度を高めます。

長期的なコスト削減

定期的な改修工事により、将来的な修繕費用を削減できます。早期に修繕やアップグレードを行うことで、小さな問題が大きな問題に発展する前に対処でき、コストを抑えることができます。

環境負荷の軽減

改修工事により、エネルギー効率の向上や環境に配慮した設備の導入が行われます。省エネ性の向上や再生可能エネルギーの活用により、環境負荷を軽減できます。
適切な改修工事は建物の寿命を延ばすことができ、建て替えによる資源の消費や廃棄物の発生を抑えることにも繋がります。

大規模修繕とは

大規模修繕工事とは、マンションやビルなどの大規模な修繕・改修工事のことです。
「大規模修繕工事」については、建築基準法によって明確に定義されている一方、「大規模改修工事」という表現はあまり一般的ではありません。
マンション、ビルなどの不動産オーナーや、管理組合の修繕計画によって、修繕に加えて改修工事も行われることがありますが、その場合も「大規模修繕工事」と統一して呼ばれることが多いです。

実施時期

大規模修繕工事は、マンションの劣化状況や修繕箇所によって異なりますが、一般的には12年から15年の周期で実施されます。
多くのマンションでは、前回の実施から約10年が経過した頃になると、次回の大規模修繕工事に関する協議を開始することが一般的です。この協議では、修繕の必要性や範囲、費用の見積もり、一時金の有無などが話し合われます。

工事期間

大規模修繕工事の工事期間は、計画段階から着工までに約1〜2年、その後、着工から完了までに約3〜4ヶ月、大規模なマンションではそれ以上かかることがあります。
工事期間中は、足場の設置や敷地内にプレハブの建設などが行われ、多くの工事関係者が出入りします。
ベランダに洗濯物が干せなかったり、一時的にエレベーターが使用できなかったり、塗料の臭いが広がったりなど、住民にとって制限やストレスが生じる可能性があります。
住民の話し合いや同意が必要な場合は、さらに期間が伸びることもあり、計画段階での調整や住民とのコミュニケーションが重要です。

工事内容・工事項目

主な工事内容、項目は下記のとおりです。
これらすべての工事が行われるのではなく、必要な範囲で行われますが、外壁塗装と防水工事は毎回実施されることが多いです。

仮設工事

工事の進行に必要な一時的な設備や仮設施設を構築することです。
足場や養生、電力、用水、仮設トイレなどが挙げられます。

屋根防水

屋根部分の防水層を施工し、漏水や水の浸入を防止することです。
FRP防水、ウレタン防水、シート防水、アスファルト防水の4種類があります。

床防水

床面の防水処理を行い、浸水や漏水を防ぐことです。
マンションの場合は、主にバルコニー床や共用廊下、外部階段などが対象です。

外壁塗装

建物の外壁に塗料を施し、雨風や紫外線による劣化を修繕、保護や美観の向上を図ることです。
塗装工事の他、コンクリート補修、シーリング工事、タイル張補修も含まれます。

鉄部塗装

鉄部分の錆びを除去し、酸化を防ぐ塗装や、色褪せた塗装の修繕をすることです。

建具、金物等

主に玄関ドア、自動ドア、共用部の手すりや建具の修繕や取替を行います。

共用内部

管理室や集会室、大規模なマンションであればゲストルームやジムなどの共用施設の修繕を行います。

給水設備

給水管や受水槽、給水ポンプ、循環ポンプなどの修繕や改修を行います。

排水設備

排水管や排水ポンプ、マンションによってはディスポーザー設備の修繕、改修を行います。

ガス設備

ガス供給管や器具の修繕や改修を行い、安全なガス供給を確保します。

空調、換気設備

冷暖房や換気システムの修繕や改修を行います。

電灯設備等

照明や電気設備の修繕や改修を行います。
自家発電設備や避雷針も含まれます。

消防用設備

自動火災報知機、避難器具、消火栓設備、避難誘導等の取替を行います。

昇降機設備

エレベーターの修繕、取替のことです。

駐車場設備

駐車場部分の塗装や、機械式駐車場の取替などのことです。

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マンションの建て替え

適切な修繕を定期的に行うことで、マンションの寿命を延ばすことができると説明しましたが、永遠に伸ばし続けることはできません。
鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は47年とされています。
法定耐用年数は寿命ではないものの、60年、70年と築年数が経つにつれて倒壊の可能性が増加し、安心して暮らせなくなります。
その場合は建て替えを検討しなければなりません。

建て替えか修繕かの判断

国土交通省の「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」によると、

「建替えか修繕・改修かの判断にあたっては、現マンションの老朽度と区分所有者の不満やニーズを把握し、要求する改善水準を設定した上で、それを修繕・改修で実現する場合と建替えにより実現する場合との改善効果と所要費用を比較して判断を行います。その結果、修繕・改修では居住者の安全性の確保ができない、要求改善水準が実現できない等建替えが合理的と判断される場合には、マンション敷地売却制度の活用も視野に入れつつ、建替え等の検討を進めます。」と記載があります。

引用:国土交通省「建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」

建て替えには費用的な負担が多く、住民は、仮住まいを探さなければならないなどの負担があるため、修繕で対応出来ないかなど慎重に判断する必要があります。

株式会社マーキュリーでは、マンション再生事業を行っております。

専門会社と連携を図り、劣化箇所や設備の修繕や交換、新たな設備の導入、また、耐震対策工事などを行い、建物全体や設備の延命を目的とした修繕工事だけではなく、新たな価値を付加したり、社会的な需要に合わせたマンション全体の改修工事を行います。
また、建て替えや敷地売却の提案も行っており、専門のスタッフが多角的にサポートいたします。
建て替えか修繕かなどの判断が難しい問題も、これまで多くのご相談に対応してまいりました。
マンションの修繕・改修に関心をお持ちの方は、ぜひ一度お問い合わせください。

大庭 辰夫

記事監修

借地権や底地で様々な悩みを抱えている方々へ!
その悩み解決します。

監修者
株式会社マーキュリー 取締役 大庭 辰夫