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【建替え以外の選択肢】マンション敷地売却制度とは?

マンションの老朽化が進むと、耐震性や安全面での不安が増します。 大規模修繕などの定期的な修繕、改修を行ったとしても、いつかは寿命がくるため取り壊す必要があるでしょう。 では、マンションを取り壊す必要が出てきたとき、住民はどのようにしたら良いのでしょうか。 マンションが終わりを迎える際、主に建替えと売却の2つの選択肢があります。 ここで言う売却とは、区分所有者がそれぞれの部屋を売却するということではなく、マンションの敷地を売却することをいいます。 この記事ではマンションの敷地売却について解説します。

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マンションの老朽化によって起こる問題

地震の多い日本では、マンションの老朽化による耐震性の低下は大きな問題の一つです。
また、老朽化した建物は地震に限らず、自然災害に対して脆弱であり、住民の生命や安全に直接的な危険をもたらします。
さらに、居住者が定着せず空き家問題に繋がり廃墟と化した場合、景観を損ねるだけでなく、治安の悪化を引き起こす可能性があります。

老朽化したマンションの未来

マンションは約12年〜15年程度の周期で大規模修繕工事を行います。
建物の耐震性を向上させるための補強、防水対策、外壁の修繕などマンションの維持と再生が図られます。
それでも築年数が重ねられ、修繕や改修による対策が限界に達した場合、マンションの終活について検討を始めることとなります。ここで言う終活とは、老朽化したマンションの将来について考え、対策を立てることを指します。
その際の選択肢としては、マンション全体を建替えるか、あるいは売却するかの二つが考えられます。どのマンションも、終活を迎えるときには、この二つの選択肢のいずれかを選ぶ必要があります。

マンション建替え等円滑化法によるマンション敷地売却制度

マンション敷地売却制度とは、マンション建替え等円滑化法(正式名はマンションの建替え等の円滑化に関する法律)で定められていますが、施行当初から存在したわけではありません。
マンション敷地売却制度の創設の経緯も含めて、解説します。

マンション建替え等円滑化法とは

マンション建替え等円滑化法とは、その名の通りでマンションを建替える際に手続きを円滑に行うための法律です。
2002年より施行され、当初は「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」という名前でしたが、2011年の東日本大震災の影響を受け、2014年に「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に改正、敷地売却制度や容積率の緩和措置が創設されました。
今後の地震に備え、耐震性が不足している建物の建替えなどを行いやすくすることを目的としています。

マンション敷地売却制度の概要

マンションとその敷地の売却については、区分所有法に具体的な規定がないため、民法が適応されます。
民法によれば、全ての区分所有者の合意がなければ、マンション及び敷地の売却はできません。例え、区分所有者が少なかったとしても、全員の合意を得ることは非常に困難でしょう。
しかし、区分所有者全員の合意が得られないからと言って、耐震性や安全性が劣るマンションをそのまま放置することは大変危険です。万が一倒壊した場合、そのマンションの住民だけでなく、周辺の多くの人が危険に晒されてしまいます。
この問題を解消するために作られたのがマンション敷地売却制度です。
この制度では、まず特定行政庁に、マンションの解体が必要であると認定する権限が付与されています。
そして、特定行政庁によって耐震性不足が確認され、解体が必要と認定されたマンション(要除却認定マンション)については、区分所有者及び議決権の5分の4以上が賛成した場合、マンション及びその敷地の売却を行う決議が可能とされました。

建替えが困難な理由とマンション敷地売却との違い

マンション建替え円滑法や区分所有法によると、建替えには、区分所有者及び議決権の5分の4以上が必要となっており、数値ではマンション敷地売却と同じですが、建替えのほうが困難であると考えられています。
建替えを行う場合、元の敷地に新たなマンションを建設し、以前の区分所有者が再びそこに住むことが前提となります。
マンションの老朽化と同時に住民の高齢化が進んでおり、余生を考えると建替えを面倒だと考える場合や、所有者が自ら住むのではなく、第三者に賃貸していたり、空室のまま放置されていたり、または相続した後に手付かずのままにしているケースも少なくありません。
このような状況下では、再度住むことを前提とした建替えへの合意形成は非常に困難になります。
しかし、マンション敷地売却制度では、マンションと敷地の売却までが対象となり、その後の活用は買受人の裁量に委ねられます。
他の場所に引っ越すこともでき、買受人が同じ土地にマンションを建設した場合は、そこに住むという選択肢も生まれます。
また、特定行政庁が耐震性不足を認定するため、建替えよりも合意形成が比較的容易であると考えられます。

マンション敷地売却制度の対象となるマンション

マンション敷地売却制度の対象となるマンションの条件として、まず耐震性能が不足していることが必要です。これは、特定行政庁による耐震性の評価と認定により判断されます。耐震性の不足とは、建物が地震の揺れに耐える能力が、現行の建築基準法の水準を満たさない状態を指します。
また、そのマンションが耐震補強工事によって耐震性能を確保することが困難、もしくは不適切であると認定されることも必要です。これは、工事による改修が困難である場合や、工事費用が建物価値を大幅に上回ると評価される場合などが当てはまります。
よって、ただの老朽化では認められず、マンション敷地売却制度の活用ではなく、修繕や改修を行う必要があります。
また、耐震性に問題のあるマンションの建替えを促進する制度であるため、ただマンションの敷地を売りたい場合も認められません。

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マンション敷地売却の流れ

マンション敷地売却の大まかな流れは下記の通りです。

  • 除去の必要性に係る認定(法102条第2項第1号~第3号)
  • 買受計画の認定 (法109条)
  • マンション敷地売却決議 (法108条)
  • マンション敷地売却組合の設立認可(法120条)
  • 分配金取得計画の決定・認可 (法141条)
  • 組合がマンションと敷地の権利を取得(法149条)
  • 買受人にマンションと敷地を売却
  • 買受人がマンションを除去
  • 買受人が再建

必要な意思決定や手続きも含めて、詳しく解説していきます。

①検討

まずは修繕・改修・建替え敷地売却といった再生手段について検討を行います。
建替えについては従来の区分所有法に基づく建替えとマンション敷地売却による建替えがあります。

②専門家の選定

マンション管理会社や建築設計事務所など、相応しい専門家を選定します。

③建物の老朽度を把握する

建物の老朽度を客観的に把握するために耐震診断等の建物診断を実施します。
耐震性不足等のマンションのみ適用が可能で、複数棟型マンションの場合は、全ての棟が耐震性不足等であり、かつ、土地の全部又は一部を全ての区分所有者で共有している場合のみ適用が可能です。
また、売却代金や各区分所有者が得ることのできる分配金の目安を把握するために不動産鑑定評価も活用します。

④管理組合による決議

管理組合としてマンション再生方針を決めるための決議を行います。
これは区分所有法による「建替え決議や」、マンション建替円滑化法による「マンション敷地売却決議」とは異なります。

⑤「売却計画委員会」等の設置

マンション敷地売却決議の成立に向けて、計画組織を設置します。

⑥買受人の選定

専門家の協力を得ながら、買受人となるべきデベロッパー等を選定します。
自由に選定する随意方式や、希望する間取りや設備などの条件を包括する提案を求める、プロポーザル方式で決定します。

⑦除去の必要性に係る認定

特定行政庁に対し、マンションを除却する必要がある旨の認定を申請します。
「耐震性不足」(マンション建替円滑化法102条2項一号)、「火災安全性不足」(同二号)、「外壁等剥落危険性」(同三号)のいずれかが確認されたマンションについて、申請を行うことが可能です。
除却の必要性に係る認定を受けたマンションは、マンション敷地売却制度の対象となり、マンション建替円滑化法第105条の規定に基づく容積率の緩和特例の対象にもなります。

⑧買受計画の認定

選定されたデベロッパー等の買受人は、買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受ける必要があります。この認定はデベロッパーが申請します。

⑨マンション敷地売却決議

区分所有者及び議決権の4/5以上の同意が得られれば、正式に敷地売却が進められます。

⑨マンション敷地売却組合の設立認可

都道府県知事等に対し、マンション敷地売却組合の設立認可の申請を行います。
マンション建替え円滑化法では、マンション敷地売却事業はマンション敷地売却組合のみが実施することができるとしています。

⑩組合から反対区分所有者への売渡し請求

マンション敷地売却参加者は、反対区分所有者(売却に参加しない区分所有者)の区分所有権と敷地利用権とを時価をもって売り渡すよう請求する権利が認められます。

⑩分配金取得計画の決定・認可

売却マンションの区分所有権及び敷地利用権のすべてが組合で保有されると、組合は「分配金取得計画」を定め、都道府県知事等の認可を申請します。
組合は分配金取得計画に従い、指定された期日までに各区分所有者への分配金を支払います。ただし、担保権が付与されている区分所有権に関しては、その分配金は供託し、権利消滅期日までに借家人等に対し補償金を支払うこととなります。また、居住者は、権利消滅期日までにマンションを明け渡します。

⑪組合がマンションと敷地の権利を取得

分配金取得計画が認可されると、権利消滅期日よりマンションの所有権及び敷地の所有権が組合に帰属します。

⑫買受人にマンションと敷地を売却、組合の解散

買受人とマンションと敷地の売買契約を締結し、権利が移行します。
買受人への売却が完了後、組合は解散します。
なお、マンション敷地売却事業の完了後の組合の解散は、都道府県知事等の認可が必要です。

⑬買受人がマンションを除却、再建

買受計画に従ってマンションの除却を実施します。買受人が買い受けたマンションを除却せずに販売することはできません。
その後、マンション等を建設しますが、建築物の用途等については、特段制限はありません。
住人は買受人との個別契約により再入居を行うか、他の住宅への住替えを行うことになります。

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マンション敷地売却制度のメリット

マンション敷地売却制度のメリットについて解説します。主なメリットは、以下の3つです。

①合意形成が比較的容易

膨大な建築費や予想外の費用発生による財政状況の悪化や、建築期間の遅延、施工ミスなどのリスクが少なく、区分所有法による建替えよりも意思決定事項が少ないため、合意形成が比較的用意です。

②区分所有者のリスクが少ない

上述の通り、マンションの建て替えは多大な費用と時間を必要とし、その過程で様々なリスクが発生します。
しかし、マンション敷地売却制度では、敷地を売却し、得た金額を区分所有者に分配するため、区分所有者が直面するリスクは軽減されます。

③選択の自由

マンション敷地売却制度では、必ずしも再建築物を取得する必要がなく、各区分所有者は、得た分配金を元に自身のライフスタイルに合った選択をすることが可能です。
例えば、新たな住居を購入する、賃貸に移る、その金額を貯蓄や投資に回すなど、各自の自由に選択することができます。

マンション敷地売却制度の注意点

続いて、注意点についても解説していきます。

①除却の必要性に係る認定が必要

マンション敷地売却制度は、要除却認定マンションにしか適用されません。 令和2年のマンション建替え等円滑化法の改正により、耐震性に問題のあるマンションに加え、外壁等の剥離により危険が生ずるおそれのあるマンションも要除却認定マンションの対象となりました。 しかしそれ以外のマンションは、たとえ古くても適用とならないので注意が必要です。

②売却までしか関与できない

区分所有者は、デベロッパー等の買受人に売却するところまでしか関与できません。 建替えの場合、同じ土地に新しく建てられたマンションに入居できることが決まっていますが、敷地売却の場合は個別の契約が必要になります。 条件等が合わない場合、別の住居を探さなければなりません。

③事業開始後、買受人の変更ができない

マンション敷地売却決議の前に、買受人を選定する必要がありますが、検討、協議を進めていく中で、より良い条件の買受人が見つかったとしても、後から変更することはできません。

マンションの安全維持するために

年々、新たなマンションが建築される一方で、高経年マンションも増えていくことと思います。
大震災を過去に経験している私たちは、耐震面についてはよく考えなければなりません。
株式会社マーキュリーでは、マンション再生事業を行っております。
敷地売却だけでなく、修繕・改修、建替えの可能性を検討し、最適なプランをご提案いたします。
建て替えか修繕かの判断など、難しい問題もぜひお任せください。
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大庭 辰夫

記事監修

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監修者
株式会社マーキュリー 取締役 大庭 辰夫